2020年6月9日 顔が赤くなるのは発がん性物質のせい…軽視されるアルコールのリスク 「巣ごもり飲酒」に注意

アメリカのトランプ大統領は4月23日の記者会見で、新型コロナウイルス感染に関連して「消毒液を注射してみてはどうか」などと発言し、波紋を呼びました。

海外では、飲酒でウイルスを殺菌できる、あるいは免疫力がつくといった誤った情報も出回りました。世界保健機関(WHO)は、「アルコールを摂取しても新ウイルスから身を守ることはできず、ウイルスを除去することもできない」として、飲酒を控えるよう呼びかけています。また、「飲みすぎれば免疫力が弱まって、ウイルスから身を守る能力が減退する可能性がある」とも指摘しています。

たばこに次ぐ第2位の発がん要因

新型コロナウイルスの拡大にともない、「巣ごもり飲酒」が問題になっています。家庭向けの一部のアルコール飲料は、消費が前年より増えたといいます。アメリカの調査では、3人に1人が「在宅勤務中に飲酒する」と答えていますから、驚きます。

こうした傾向は、がん予防の面でも問題です。飲酒は、たばこに次ぐ第2位の発がん要因で、食道がん、 咽頭いんとう がん、肝臓がん、大腸がんなどのリスクを確実に高めます。お酒が「百薬の長」になるのは、せいぜい1合まで。最近では、わずかな量でも発がんのリスクを高めるという研究結果も出ています。飲酒は、多くの日本人が考えているより、はるかに大きな健康リスクです。

緊急事態宣言は解除されましたが、在宅勤務を継続する人は少なくないでしょう。巣ごもり飲酒には、今後も注意が必要です。

日本人の「リスク感覚」はズレている

一般女性に、生活上のリスクの大きさを順位づけしてもらった調査があります。そこでは、日本人の「リスク感覚」のズレが明らかになりました。

一般女性が最もリスクを感じていたのは原発で、2位はピストル、3位は食品保存料でした。たばこは8位、お酒は21位と、「圏外」に位置づけられていました。しかし、実際のリスクは、たばこが断然トップで、お酒が2位、3位は車の運転です。なお、食品保存料は27位で、一般に思われているほどのリスクはありません。

たばこが、がんの原因のトップで、間接喫煙でもがんを増やすことはずいぶん知られるようになりましたが、飲酒のリスクの方は明らかに軽く見られています。

「アジアン・フラッシュ」は一種のマーカー

日本は飲酒に寛大な社会です。電車のなかで泥酔して眠りこけている会社員など、欧米ではまずお目にかかったことがありません。そもそも、白人はお酒が強い人がほとんどで、飲んで顔が赤くなる人はまずいません。アルコールで顔が赤くなる現象は、東洋人だけに見られるので、英語では「アジアン・フラッシュ」と呼ばれます。世界人口の約8%がこのタイプとみられています。

お酒に含まれるエタノールは、肝臓で「アセトアルデヒド」に分解されます。エタノールは消毒に使われるくらいですから、毒性はありません。しかし、アセトアルデヒドには発がん性があります。アセトアルデヒドは酵素により酢酸に分解されますが、東洋人のおよそ4割は、この酵素の遺伝子に変異を持っているのです。飲んで顔が赤くなるのは、発がん性物質が体内にたまっていることを示す一種の「マーカー」なのです。

「巣ごもり飲酒」にはくれぐれもご用心。とくに喫煙と飲酒が重なると、発がんリスクは一気に高くなります。感染予防のために自粛生活をしても、がんが増えては元も子もありません。