2020年5月26日 夫が一日1箱以上吸うと、妻の肺腺がんリスクは2倍に…日本の受動喫煙対策は「前世紀並み」

喫煙はがんの最大の原因で、日本人男性の場合、喫煙者は、非喫煙者に比べて肺がんのリスクは4〜5倍に増えます(肺がん以外にも、ほとんどすべてのがんを増やします)が、この倍率は、欧米では10〜20倍と言われます。

東洋人に特有の遺伝的要素もありますが、欧米に比べ、日本では受動喫煙がまだ多いことも背景にあると思います。日本人の場合、本人がたばこを吸わなくても、日々の受動喫煙でがんのリスクが高まってしまい、喫煙者と非喫煙者の差が欧米ほどつかないというわけです。

100ミリ・シーベルトの被ばくに相当

私はお酒を飲みますが、たばこは吸いません。「受動飲酒」はありませんが、たばこの場合は、受動喫煙でもがんが増え、「自業自得」では済みません。たばこの最大の問題は受動喫煙にあり、自らに原因がない不本意な健康被害という点では、原発事故に近い性質を持つと言えるかもしれません。実際、受動喫煙の発がんリスクは、100ミリ・シーベルト程度の被ばくに相当します。

副流煙の発がん性物質は3〜5倍

たばこの煙には、発がん性のある物質が60種類も含まれており、タールやニコチン、ベンゾピレンなどの発がん性物質の濃度は、喫煙する本人が吸う主流煙より、周囲の人が受動喫煙する副流煙の方が高く、3〜5倍になります。たばこを吸わない奥さんが、一日に1箱以上吸うご主人と暮らしていると、奥さんの「肺腺がん」の危険は約2倍になります。

受動喫煙は、がんの他、心筋梗塞や脳卒中など、近くの日本人の死亡原因となっています。そのうち約半数が、職場での受動喫煙によって引き起こされる肺がんと心筋梗塞こうそく で、年間に男性1814人、女性1811人、合計3625人もの人命が失われていると推計されています。

飲食店の規制は厳しくなったが…

この4月から、改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例が全面的に施行され、受動喫煙への規制が厳しくなりました。飲食店は原則、禁煙となりましたが、例外も認められ、全国の45%、東京都では84%の店が禁煙になります。

飲食店の規制ばかりが話題になっていますが、「コンビニとたばこ」も切っても切れない関係にあります。コンビニの売り上げの約4分の1はたばこです。健康・自然志向をうたう店舗でも、公然とたばこが販売されている姿には正直、違和感を覚えます。

日本も締結国の一つである「たばこ規制枠組条約」のガイドラインには、「たばこ製品の陳列と露出は、広告および販売促進に相当するため、禁止しなければならない」と規定していますから、コンビニでの店頭販売は大きな問題です。

コンビニから灰皿を撤去しようという動きも広まりつつありますが、WHO(世界保健機関)からは、日本の受動喫煙対策は「前世紀並み」ときびしい指摘を受けています。

「タバコフリー・オリンピック」の実現を

東京オリンピック・パラリンピックが1年延期されました。これを、「タバコフリー・オリンピック」の実現のためのチャンスととらえたいと思います。日本が世界に誇るコンビニが、模範を示してほしいものです。

たばこは、新型コロナウイルスの感染症に関しても大きなリスク要因です。喫煙のとき、ウイルスの付着した手で口元に触れることは、感染のリスクを高める可能性があります。また、中国・武漢を中心に 感染患者1099人の臨床データを分析した研究では、喫煙者は人工呼吸器が装着される、あるいは死亡する危険性が、非喫煙者の3倍以上になることが明らかになりました。高齢や基礎疾患があることと比べても、重症化の最大のリスクであると報告されています。外出自粛と喫煙自粛(=禁煙)を同時に進める必要があります。