2020年3月24日 「がん家系」ってホントにあるの?

「焼き肉や焼き魚のこげでがんができる」などと聞いたことはありませんか? このような、がんにまつわる迷信はたくさんあります。「遺伝病」という誤解もその一つです。

がんは、遺伝子が傷ついて不死細胞ができる「遺伝子の病気」ですが、「遺伝する病気」とは言えません。実際、遺伝はがんの原因の5%程度にすぎませんから、「ほとんどは遺伝しない」のです。

一卵性双生児でも同じがんになるのは1割

「両親ともがんだ」と聞けば、「がん家系」のような気がしますが、一生の間に男性の3人に2人、女性の2人に1人が何らかのがんにかかるのですから、けっして珍しいケースではないのです。

まったく同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、同じがんにかかる確率は1割程度にすぎません。逆に、長い時間をともに暮らす夫婦は、同じがんにかかりやすい傾向があります。とくに、肺がんや胃がんでは、夫婦ともに発生する確率が高いことが分かっています。家庭内での喫煙や塩分の高い食事の影響があると思います。

がんの原因の半分以上は生活習慣にありますから、社会のあり方や生活の変化によって、多いがんの種類も変わってきます。たとえば、最近、韓国に抜かれましたが、日本は長い間、世界一の「胃がん大国」でした。今でも、 罹患りかん 数では、大腸がんに次いで2位です。

一方、白人の胃がん発生率は、日本人の10分の1程度で、米国では白血病を下回ります。しかし、その米国でも、1930〜40年代は胃がんがトップで、今の日本並みに発生率が高い時代がありました。現在の日米の「胃がん格差」は、民族差によるものではないのです。

ハワイとブラジル 移民の胃がん発生率に差

ハワイやブラジルなど、海外に移住した日系人は、日本人の遺伝子を持っています。しかし、かかりやすいがんの種類は、日本に住む私たちと大きく異なります。たとえば、乳がんは、わが国でも増えているものの、依然として欧米と比較すれば罹患率、死亡率ともに半分にも満たない低さです。しかし、ハワイやブラジルの日系人の罹患率は、日本国内の2〜5倍に達します。動物性脂肪などが多い西洋的な食生活が、海外の日本人に乳がんを増やしたと考えられています。

逆に、ハワイヘ移住した日本人では、胃がんの発生率は大幅に低くなっています。塩分の少ない食事に変わったことが原因でしょう。一方、ブラジルの日系人では、国内とほとんど変わっていません。ハワイとの差は、塩分の多い日本的な食生活を、移住先でも続けたかどうかによるものだと思います。

男性の約6割、女性の約3割が予防できる

がんの発生原因には、喫煙、飲酒、食事、塩分過多、運動不足などがあります。とくに影響が大きいのは、喫煙(がんの原因のトップ)と飲酒。そのほか、ピロリ菌感染やヒトパピローマウイルスなどに感染しているかどうかも重要です。そして、男性のがんの約6割、女性のがんの約3割が予防できるとみられています。

家系による発がんも、全体の5%程度ですが、確かに存在します。たとえば、ハリウッドスターの女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、遺伝子検査(血液検査で簡単に分かります)でその異常を知り、両方の乳腺組織と卵巣を予防的に切除しています。次回はこの「家族性腫瘍」を取り上げます。