第十四回 2020年8月25日 9人に1人…高まる乳がんリスクに少子化の影 「妊娠」「授乳」の減少も影響?

緊急事態宣言が解除され、一時は収まったかに見えたコロナ禍ですが、社会活動の制限の緩和に伴って感染者の数が再び増えています。しかし、PCR検査の件数が増えれば、陽性者数も増えるのは当然です。また、無症状の陽性者が多いのも、この感染症の特徴です。感染した人の数に一喜一憂するのではなく、「重症者」「死亡者」の数をより重視する必要があると思います。

一方、マスクの着用や手洗いのためと思いますが、インフルエンザの患者数は激減しています。ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎も、インフルエンザと同様に、例年よりずっと減っています。皮肉なことに、今年は、「ウイルス感染症による死亡」が例年より少ない年になるかもしれません。

新型コロナウイルスの猛威は、3年を超えては続かないと思います。これに対し、「がん」は流行性の感染症と違い、高齢化とともに増え続けていきます。新型コロナウイルス感染症にばかり関心が集中するのは、バランスを欠くと言えるでしょう。

今後も増えていく女性のがん

現在、日本人男性の57万人強、女性の44万5000人ほどが、年間にがんと診断されています。そして、国立がん研究センターの長期予測によると、2035〜39年の平均で、男性は64万人、女性は53万人と推計され、男性で1割以上、女性では2割近く増加すると見込まれています。

私もその一人ですが、過去5年以内にがんと診断されて生存している「有病者」については、現在、男性約173万人、女性約140万人、合わせて313万人とされています。しかし、35〜39年の平均では、男性は184万人、女性は167万人と推計され、有病数は男性で6%、女性では19%も増加する見込みです。

高まる生涯罹患リスク

がんのリスクを表す数値として分かりやすいのが、「生涯累積がん 罹患りかん リスク」で、生涯で、何人に一人が、がんに罹患するかを示します。よく、「日本人の2人に1人が、がんになる」と言われます。このフレーズは、10年以上も前から私が使ってきたものです。

生涯累積がん罹患リスクの最新の数値は、国立がん研究センターのホームページで定期的に更新されています。7月6日に公表された最新データ(2017年のデータでの推計)では、男性は65.5%、女性は50.2%でした。前回までの数字は、13年データを使った推計で、男性62%、女性46%、15年データでは、男性63%、女性48%でした。高齢化を背景に、がんにかかるリスクは年々高くなっています。国立がん研究センターのホームページでは、男性、女性とも「2人に1人」としていますが、男性では「3人に2人」、女性でも「2人に1人」が、がんになると言えるでしょう。

食生活や肥満の影響だけでなく

また、臓器別にみてみると、女性が生涯に乳がんと診断される確率は、前回の「11人に1人」から、「9人に1人」とアップしていました。食生活の欧米化や肥満、運動不足といった生活習慣の変化のほか、少子化も大きな影響を与えていると思います。

妊娠から授乳に至る約2年間は生理が止まるため、乳がんリスクは下がります。授乳が乳がんを予防することは確実視されていますから、出生数の低下が乳がんを増やすことになるのです。

男性では、前立腺がんの生涯罹患リスクも9人に1人とされています。生活環境の変化とともに、腫瘍マーカーPSAの測定が普及したことも影響していると思います。

新型コロナウイルスを甘く見てはなりません。しかし、がんという巨大なリスクの存在もまた、忘れてはならないのです。