2020年7月14日 がん患者の25%「新型コロナが治療に影響」免疫力が下がる治療、下がらない治療

世界保健機関(WHO)は6月1日、新型コロナウイルスの感染拡大による医療への影響を発表しました。77%の国が、新型コロナの感染拡大で他の病気の治療が影響を受けたと報告しており、がん治療に影響があったと答えた国が42%に上りました。

中国からの報告では、新型コロナウイルス感染者の死亡率は心血管疾患10.5%、糖尿病7.3%、慢性呼吸器疾患6.3%、高血圧6.0%、がん5.6%とされています。がんは他の病気と比べて、とくにコロナ感染が致死的になりやすいわけではありませんが、治療には大きな影響が出ました。

4人に1人が「治療に影響」

新型コロナウイルスの院内感染が広がった医療機関では、手術などの延期が相次ぎ、患者さんの間で不安が広がりました。そんな現状を裏付ける調査結果も発表されています。女性のがん患者が参加するネット患者会「ピアリング」が4月19〜25日、ネットで1101人に調査したところ、手術延期などの影響を受けた人は約4分の1に上ったそうです。一時、およそ8割の手術延期が報じられたがん研有明病院のケースは、決してひとごとではないのです。

調査では、「がん治療に関して影響を受けている」は272人(24.7%)。具体的には、「(化学療法など)治療の遅延」が46人、「検査の遅延」が29人、「乳房再建の遅延」が27人、「手術の遅延」が19人と遅延の状況は多岐にわたります。医療機関側の事情による「診察の延期」は41人ですが、「感染への不安から、自ら通院予定を延期」した人も57人います。

がん患者や医療者など582人に対する国内の別の調査でも、参加者の2割以上が、すでに「がん治療や手術において、新型コロナの影響を受けている」と回答しています。さらに、6割近くの人が、「影響を懸念している」と答えています。

抗がん剤治療が死亡リスクに

がん治療の延期や中止の理由には、治療が安全に行えないことのほか、治療による感染リスクの上昇があげられます。実際、治療中(直後)のがん患者が新型コロナに感染すると、致死率が高くなるというデータも出ています。

肺がんなど、胸部のがんの治療を受け、新型コロナに感染した400人を対象に分析した結果、感染を診断された日から過去3か月以内に抗がん剤治療を受けていた患者では、新型コロナウイルスによる死亡リスクが有意に高くなることが分かりました。

400人中、死亡したのは141人。このうち、がんで亡くなったのは1割程度にすぎなかったのに対し、約8割の人が新型コロナ感染症で亡くなっていました。死亡者のうち、化学療法を受けていたのは約半数の47%でしたが、放射線治療を受けていたのは9%に過ぎませんでした。

免疫力が下がりにくい放射線治療

岡江久美子さんの死後、所属事務所は「昨年末に初期の乳がん手術をし、1月末から2月半ばまで放射線治療を行い免疫力が低下していたのが重症化した原因かと思われます」というコメントを出しました。しかし、一般的に言って、初期の乳がんの手術後の放射線治療で免疫力が大きく下がることはまずありません。免疫を担う白血球などは骨髄で作られますが、乳がんの放射線治療で照射される骨髄はわずかであり、免疫力の低下は考えにくいと言えます。

もちろん、予防的に広い範囲で放射線を照射した結果、骨髄の働きが悪くなり、白血球が減って、免疫力が一時的に低下するケースがないわけではありません。とくに、放射線と抗がん剤を同時に組み合わせる化学放射線療法では、その影響も無視できません。ただ、多くの放射線治療は通院ですみ、免疫力の低下もほとんどみられません。その意味では、コロナ禍の今、放射線治療は安心して受けられるがん治療の選択肢として評価されるべきだと思います。