2020年6月23日 コロナ禍で激減した「がん検診」 “再流行”懸念の秋が来る前に受けよう

新型コロナウイルスの猛威はひとまず収束に向かった感もありますが、東京アラートが発せられ、安心はできません。第2、第3波も予想され、長期戦を覚悟しなければならないようです。

このウイルスがやっかいなのは、感染しても風邪のような軽症であることが多く、8割近くは自然に良くなってしまうことです。インフルエンザと異なり、症状が軽微なことも多いこの感染症では、多くの人々が感染しながら外を歩き回ってしまいます。症状の軽さこそが、感染の広がりの原因になってしまうわけです。

「駆け足の死」の恐怖

さらに、怖いのは、重症化する人が一定の割合でいる点です。そして、もう一つ怖いのは、この病気で亡くなる場合、発症から死亡までが非常に早い点です。そして、志村けんさんや岡江久美子さんのように、その「駆け足の死」はメディアを通して可視化されます。病院で亡くなるケースが多く「死の非日常化」が進んだ現代で、平穏な日常を突然襲うこのウイルスは、恐ろしくやっかいな存在に思えます。

これと比べ「がん」は、たとえ治らない場合でも、徐々に死に向かっていきます。転移があって完治はできないと言われても、多くの場合、年単位の時間が残されています。私もコロナではなく、「がんで死にたい」と願っています。

スペイン風邪の死者39万人 がん死は年間38万人

しかし、コロナ禍にも終わりがあります。まずは、一人一人の行動によって、感染拡大を阻止し、早期の収束を目指す必要があります。その上で、がんに対する備えをおろそかにしないことが大切です。

1918〜20年に流行した「スペイン風邪」は、史上最悪のパンデミックと言われ、日本でも約39万人の死者が出ました。わが国における年間のがん死亡数は、ほぼ等しい約38万人です。そして、流行性の感染症と異なり、これが毎年続くことを忘れてはなりません。

がんの発生原因の半分程度は、生活習慣にあります。コロナ禍で長引く在宅勤務により、運動不足が進むことは確実でしょう。喫煙や飲酒が増える可能性もあります。運動不足から肥満が進み、糖尿病になると、がんのリスクは高まり、がん全体では2割増、すい臓がんや肝臓がんでは2倍になります。つまり、在宅勤務が長引くことで、現役世代のがん患者が増加する懸念があるのです。運動をする機会をいかに確保するかが課題です。こまめに体重計に乗ることもお勧めします。

緊急事態宣言後、がん検査が激減

私自身が経験した 膀胱ぼうこう がんでもそうでしたが、がんは症状が出にくい病気と言えます。ましてや、早期がんでは無症状であることがほとんどです。早期に発見するためには、症状がなくても定期的に検査を行うがん検診が欠かせません。緊急事態宣言が出てからは、がん検診や人間ドックの実施が激減しています。やむを得ないことですが、コロナ禍においても、がんの早期発見の重要性は変わりません。

日本のがんのうち 罹患りかん 数が最多の大腸がんの場合、検診で発見されるような1期の10年生存率は92.9%ですが、転移がある4期では12.7%と大きく低下します。2番目に多い胃がんでも、1期と4期の10年生存率は、90.7%と4.4%。大きな開きがみられます。

新型コロナ流行の状況を見ながら、がん検診の遅れを最小限にしていく必要があります。例年、春に検診を受けていた人も秋に集中すると、検診を受けられない人が増える可能性があり、心配です。秋に新型コロナが再び流行する可能性もありますから、夏までに検診を受けておくとよいでしょう。とくに東京では、オリンピック開催を前提にしていたため、夏の検査枠には余裕があるようです。

正しく恐れよう

新型コロナを心配するあまり、健康を損ねては本末転倒です。福島第一原発事故後、放射線 被曝ひばく がわずかなケースでも過剰な避難が続き、震災関連死が増えてしまいました。避難者の糖尿病が6割も増えた地域もありました。今回のコロナ禍でも同じことが起きると心配しています。

放射線もコロナも目に見えない点が共通で、それが恐怖をあおります。原発事故後には、放射能データを詳細に測定、公表したことが功を奏しました。今回もPCR検査や抗体検査を進めながら、コロナウイルスの 全貌ぜんぼう を捉えることが大切でしょう。

放射線もコロナも「正しく恐れる」ことが大切です。