トップページ知って得する講座欧米では峠を越えたがん死 日本で増え続けるのはなぜ?

欧米では峠を越えたがん死 
日本で増え続けるのはなぜ?

日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人ががんを経験すると言われています。いまや「国民病」のがんは、誰にとっても無縁な病ではありません。この難敵と向き合うには、まず「敵を知る」ことから。がん治療一筋の専門医、東京大学准教授の中川恵一さんが、知っておきたいがんの最新知識を伝えます。

『中川恵一「がんの話をしよう」』が読売新聞ヨミドクターで、2月11日スタートしました。

全国の小・中・高校で「がん教育」が始まっています。がんという病気は、わずかな知識があるかどうかで運命が分かれる病気ですから、「オトナのがん教育」はぜひ、この連載で受けてください!と仰っています。

その第一回を転載いたしました。どうぞ、ご一読を!
続きは、「知って得する講座」に掲載予定です。

第二回 2020年2月25日 日本が「がん大国」になった本当の理由
第三回 2020年3月10日 がんの男女差…「55歳」で患者数が逆転するのはなぜか?
第四回 2020年3月24日 「がん家系」ってホントにあるの?
第五回 2020年4月14日 若い人に多い「家族性のがん」 乳房、前立腺…欧米では発症前の切除も
第六回 2020年4月24日 [岡江さん死去]乳がん治療はコロナ重症化に影響するのか?
第七回 2020年5月12日 がんの大きな原因は「たばこ」と「運」…だからこそ早期発見を
第八回 2020年5月26日 夫が一日1箱以上吸うと、妻の肺腺がんリスクは2倍に…日本の受動喫煙対策は「前世紀並み」
第九回 2020年6月9日 顔が赤くなるのは発がん性物質のせい…軽視されるアルコールのリスク 「巣ごもり飲酒」に注意
第十回 2020年6月23日 コロナ禍で激減した「がん検診」 “再流行”懸念の秋が来る前に受けよう
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はじめまして、中川恵一です。東大病院で放射線治療を担当しています。
35年間、がん一筋の臨床医です。

がんはわずかな知識があるかないかで、運命が分かれる病気です。「がんになる前にがんを知る」ことが大切です。皆さんもこの連載で、「がんを知る」ことに努めていただきたいと思います。

1981年以降、死因トップの「国民病」

私も膀胱(ぼうこう)がんを経験していますが、がんはわが国の「国民病」です。年間、102万人近い人が新たにがんと診断され、約38万人がこの病気で命を落としています。

戦前・戦中までは結核が、戦後の高度成長期は脳卒中が死因のトップでした。しかし、栄養状態の改善などにより、減少に転じています。しかし、1981年にがんが死因のトップになって以降、現在に至るまで、がんによる死亡数は一貫して増え続けており、減少に転じる兆しも見られません(年齢調整死亡率は低下しています)。

ところが、欧米ではかつて日本における脳卒中や結核がそうであったように、がんによる死亡数はすでに峠を越えています。先進国のなかで、がん死亡が増え続けているのは日本くらいなのです。人口10万人あたりのがん死亡数では、日本は米国のナント2倍近くにもなっています。

男性の3人に2人、女性の2人に1人が

がんは日本人の死亡原因の約3割を占め、罹患(りかん)する確率は50%を超えています。アバウトに言えば、日本人の2人に1人以上が、がんになると言えます。正確には、日本人男性のがん罹患リスクは生涯で62%、女性でも47%に上ります。しかし、この数字は2014年のものです。がんの罹患情報を集約する「がん登録」制度は整備が遅れており、16年の1月からやっと始まったばかり。最新データが5年以上前のものとは、正直、情けない状態です。

この生涯がん罹患リスクは、長期的には上昇傾向にあり、19年には、男性が65%、女性でも50%程度まで上昇するはずです。つまり、現在、日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人が、がんになる計算です。

発がん原因の半分以上は「生活習慣によるもの」で、喫煙率や飲酒率などの男女差が、発がんリスクの男女差につながっています。しかし、54歳までの若い世代では、女性の方にがんが多いため要注意です。また、女性の喫煙率が上昇傾向にある点も気がかりです。

日本人男性の喫煙率は3割程度、女性では1割弱ですが、ヨーロッパ諸国では男女の喫煙率に日本ほどの男女差はありません。スウェーデンなど、女性の喫煙率が男性を上回る国さえあります。同国は女性の就業率が高く、仕事に伴うストレスが、人をたばこに向かわせるのかもしれません。

女性も働くのが当たり前になった今日の日本でも、女性の喫煙率がもっと高くなる可能性があります。そうなれば、男女とも3人に2人が、がんになる時代を迎えるはずです。

「がんを知る」ことで身を守ろう

さて、がんは、よほど進行しない限りは「症状が出にくい病気」です。早期がんで症状が出ることはまずありませんから、健康だと思っているうちに検査をする「がん検診」が大事です。しかし、日本のがん検診の受診率は3〜4割と、欧米の半分程度です。

日本のがん治療は手術偏重で、放射線治療も欧米の半分程度に過ぎませんし、体と心の痛みをとる「緩和ケア」も遅れています。

繰り返しになりますが、がんはわずかな知識の有無で運命が分かれてしまう病気です。この連載を参考に、がんから身を守っていただきたいと思います。



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