8月2日のメルマガで、ヨーグルトより腸に良いキウイを話題にしました。 「キウイ」と「もち麦」で水溶性食物繊維を上手にとる 健康で長生きするためには、腸内環境を整えることが大事。では、具体的にどうすれば、腸を元気にして、健康“腸”寿を実現できるのでしょうか?この連載では、これまで約4万人の腸を診てきた腸のエキスパートであり、腸に関する数多くの著書を手掛ける消化器内科医の松生恒夫さんが、腸を元気にして長生きするための食事や生活の秘訣を、エビデンス(科学的根拠)に照らしながら紹介していきます。今回のテーマは、前回に引き続き「食物繊維」です。 前回(食物繊維不足は「停滞腸」「ヨゴレ腸」を引き起こす!)は、腸のエネルギー源として欠かせない食物繊維の特徴や、食物繊維には「不溶性」「水溶性」の2種類があることを解説しました。日本人の食物繊維の摂取量は減少傾向にあり、特に穀物由来の食物繊維が不足しがちになっています。今回は、食物繊維の効果的なとり方について、具体的にご紹介していきたいと思います。 まず前提として、食物繊維は不溶性・水溶性のどちらか一方をとればいいというものではありません。それぞれをバランスよくとることが大切です。では、どのようなバランスでとればいいのでしょうか。私は、長年の診療経験や研究から、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を「2対1」の割合でとることを推奨しています。 不溶性と水溶性は「2対1」の割合が理想的な理由 私は約20年前に、水溶性食物繊維の一種であるポリデキストロースに関する実験を行い、日本食物繊維学会の学会誌でその効果を発表しました。実験では、下剤(酸化マグネシウム)を絶えず服用している慢性便秘症の患者さんたちに、リデキストロース7gを含む飲料水100mlを30日間摂取してもらい、摂取前後の下剤の服用状況や排便の状況などを調べました。 その結果、ポリデキストロースの摂取前は下剤の服用量が1日2.5gだったのに対し、摂取後は1日2gに減少(図1)。排便の回数や便の硬さにも改善が見られました。 図1 水溶性食物繊維の慢性便秘症への効果 私は、前回ご紹介した厚生労働省の統計などから、日本人の食物繊維の平均摂取量を1日14gと考え、この14gを不溶性食物繊維と仮定しました(水溶性食物繊維を含む食材は限られており、意識的にとらないと不足しがちなため)。ここに水溶性食物繊維(ポリデキストロース)を7g追加摂取することで排便状況が改善したことから、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、おおよそ2対1の割合で摂取するのが理想的なバランスであると考えました。 水溶性食物繊維を意識的にとる では、どんな食材から食物繊維をとればいいのでしょう。食物繊維と聞くと、イモ類、根菜類、キノコ類などをイメージする人が多いかもしれません。これらの食材も確かに食物繊維を多く含んでいますが、不溶性食物繊維の割合が高い傾向があります。そのため、高齢者など腸の働きが低下している人がこれらの食材をとりすぎると、お腹の張り(腹部膨満感)や便秘が悪化してしまうことがあります。 実際、私のクリニックの便秘外来を受診される高齢の患者さんに食事内容を確認してみると、食物繊維をとろうとするあまり、不溶性食物繊維を多く含む食材をとりすぎているケースが少なくありません。 ご自身の食生活を振り返ってみて、不溶性食物繊維を多く含む食材をとっていると思われる方は、水溶性食物繊維が比較的多く含まれる食材を意識的にとるようにすると、不溶性・水溶性食物繊維を摂取する際の理想的なバランス「2対1」に近づけることができます。 「キウイフルーツ」には便通改善効果が 水溶性食物繊維が不足しがちな人におすすめの食材が2つあります。それは、「キウイフルーツ」と大麦の一種である「もち麦」です。 キウイフルーツは、スーパーなどではグリーンと呼ばれる緑肉種と、ゴールドと呼ばれる黄肉種が売られていますが、いずれも不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の含有比率がおおよそ2対1となっています。ただ、グリーンのほうが食物繊維を多く含んでいます。一方、ゴールドはグリーンの約2倍のビタミンCを含んでいます(表1)。グリーンは酸味があり、ゴールドはまろやかな甘さがあるので、好みで選んでいただけばいいでしょう。 <http://www.chiffonya.com/shop/kouza/titokudata_36.htm> 表1 キウイフルーツの栄養成分の比較(可食部100g当たり)
(出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版〔七訂〕」) キウイフルーツには食物繊維やビタミンCの他にも、ビタミンE、カリウム、葉酸等、私たちの体や腸の調子を整えるのに役立つ栄養素も含まれています。 キウイフルーツの腸に対する効果については、様々な科学的根拠が示されていますが、私が2012年に携わった調査でも、キウイフルーツの便通改善効果が認められています。 同調査では、全国の親子498組を対象に、1日1回の排便がない便秘または便秘ぎみの中学生・高校生とその母親に、1日1個のキウイフルーツを14日間食べてもらい、便通に変化があるかどうかを調べました。その結果、7割弱の68.2%に「1日1回以上」の便通があり、改善効果が確認されました。また、31.2%が3日以内、37.8%が1週間以内に、お腹の調子に変化・改善を感じたと答えました。 また、キウイフルーツが便を膨張させ、便の保水力をアップさせるという研究結果や、腸内の酪酸を増加させるという研究結果も報告されています。前回もご紹介したように、酪酸は腸内環境を酸性にするため、善玉菌を増やして悪玉菌を減らすことで、腸内フローラのバランスを整えてくれます。 キウイフルーツは手軽に食べられ、胃への負担もかからないので、朝食に食べるといいでしょう。 「もち麦」に豊富なβ-グルカンは生活習慣病の予防にも 私のクリニックの慢性便秘症の患者さんには、キウイフルーツとともに、大麦の一種である「もち麦」を用いた「もち麦ごはん」をおすすめしています。 大麦には「もち性」と「うるち性」があり、もち麦はもち性です。うるち性には、麦めしや麦とろごはんによく使われる押し麦などがあります。 一般的な押し麦は、100g中のエネルギー量は340kcal、食物繊維の総量は9.6gで、そのうち水溶性食物繊維は6.0g、不溶性食物繊維は3.6gです。一方、もち麦100g中のエネルギー量は339kcal、食物繊維の総量は12.9gで、そのうち水溶性食物繊維は9.0g、不溶性食物繊維は3.9gと、押し麦よりもさらに多くの食物繊維が含まれています。ちなみに、白米に含まれる食物繊維は0.5g。それもほとんどが不溶性食物繊維です。 大麦には水溶性食物繊維の中でもβ-グルカンが豊富に含まれています。β−グルカンは大腸内の善玉菌の栄養源となり、善玉菌を増やすことで、腸内環境を整えます。 また、β−グルカンには、糖質や脂質を吸着して、体外に排泄する働きがありす。そのため、血糖値の上昇を抑えたり、血中コレステロール値を低下させたりする作用などもあります。米国では2006年に、食品医薬品局(FDA)が大麦および大麦を含む製品に「冠動脈疾患のリスク低下に役立つ」と表示することを許可しています。欧州でも、欧州食品安全機関(EFSA)が同様の認可をしています。生活習慣病の予防のためにも、βーグルカンを豊富に含むもち麦ごはんは有効です。
<材料> なお、最近ではオーストラリアで開発されたスーパー大麦を使った製品も発売されています。スーパー大麦にはもち麦以上に水溶性食物繊維が含まれているので、シリアルなどで手軽に食べるのも一手です。 水溶性食物繊維は、コンブやワカメなどの海藻類にも多く含まれていますが、消化があまりよくないため、食べるときにはよくかむようにしてください。便秘がひどい方、小腸や大腸の手術をしたことのある方などは、避けた方が無難かもしれません。 高齢者などよくかめない方、食が細い方は、水溶性食物繊維の一種、ポリデキストロースが含まれた市販の飲料を利用してもいいでしょう。 (まとめ:田村知子=フリーランスエディター) Profile 松生恒夫(まついけ つねお)さん 松生クリニック(立川市)院長、医学博士 1955年東京都生まれ。80年に東京慈恵会医科大学卒業後、同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長を経て、2004年東京都立川市に松生クリニックを開業。大腸内視鏡検査では4万件以上の実績を持つ第一人者で、便秘外来、地中海式和食、漢方療法、音楽療法などを診療に取り入れ、治療効果を上げている。近著に『腸は若返る!腸の老化は脳の老化です』(さくら舎)、『腸の冷えを取ると病気は勝手に治る(大腸の専門医が教える最強の食事術)』(マキノ出版)、『寿命をのばしたかったら「便秘」を改善しなさい!』(海竜社)『「大腸リセット」で健康寿命をのばす』(廣済堂出版)、『「腸の老化」を止める食事術』(青春出版社)など多数。 もち麦ご飯1杯で、キウイ1個分の水溶性食物繊維を摂取できます。 毎日、キウイを2個食べますか。 ▼もち麦のお求めは・・・ サイトマップ|商品一覧| FLOURひろ:〒678-0172 兵庫県赤穂市坂越1331-1:tel 0791(56)5377
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