トップページ知って得する講座旅館が20年で9割減った南魚沼市で、私が民宿を始めた理由

旅館が20年で9割減った南魚沼市で、
私が民宿を始めた理由

少子高齢化の各地で地域に密着した活性化を進めています。
その一例「旅館が20年で9割減った南魚沼市で、私が民宿を始めた理由」を転載しました。
地方から「変わる」。ご参考になれば幸いです。

2019.01.02 Forbes JAPAN 編集部が選ぶ本日のおすすめ記事

黒岩揺光 Official Columnist
お寺民宿「ホタル」の支配人、フリーライター
<https://forbesjapan.com/articles/detail/24578/2/1/1>

私の故郷、新潟県南魚沼市の旧大和町には上越新幹線の浦佐駅があり、東京駅から約90分。人口1万5000人の町ながら、15年前まではスキー場が三つあり、冬は多くのスキー客で賑わった。特に、浦佐駅から徒歩15分にある浦佐スキー場は、スキー学校が全国的知名度を誇り、周辺ではたくさんの旅館や民宿が営業していた。

しかし、少子高齢化とレジャーの多様化でスキー場経営は赤字が続き、2006年に浦佐国際スキー場が、2011年に浦佐スキー場が閉鎖になった。周辺の宿泊施設も一気に閉業し、ピーク時に70軒近くあったのが、今ではたったの7軒になった。旅館だった建物はアパートや高齢者施設になったものもあれば、買い手が見つからず、無料同然で売りに出ている物件もある。

私は、そんな廃墟と化した建物から徒歩8分の所で、昨年7月、お寺だった建物を改装して民宿「ホタル」を始めた。「旅館がこれだけ廃業に追い込まれているのに、正気か?」とか「観光資源がない所に誰が泊りにくるのか?」とか「お寺だった所に泊まるなんて不気味」と言われた。

改装工事をお願いした工務店さん以外、誰1人として「いいアイデアだね!」と言ってくれる人はいなかった。浦佐駅からは徒歩20分かかり、飲食店だって歩いて10分ほどかかる。周りには民家とたんぼしかない。

しかし、開業したとたん、予約が立て続けに入った。3年に1度、隣の十日町市で開かれている「大地の芸術祭」に来る外国人観光客が多かった。稼働率は8月に9割、9月は7割だった。大地の芸術祭が終わっても、予約は入り続け、10月と11月も稼働率5割だった。提供できる部屋は一つしかないにも関わらず、開業して4か月で17か国から160人が泊りに来た。

4泊していったオーストラリア人カップルは、日本に来るのが初めてだった。東京や大阪、京都など、大都市を周るだけでなく、何もない日本の田舎を見てみたいとう思いからネットでユニークな宿泊施設を探し、ホタルに行き当たったという。

日本人と違い、長い休暇が取れる国の人々は、有名な観光地以外にも足を延ばす時間的余裕がある。彼らはレンタカーでこの町の周辺をドライブし、田園風景を見るだけで心が癒されたという。

4泊していったドイツ人の学生4人組は、ホタルを拠点に、周辺を観光した。片道2時間半かかる金沢市まで日帰りで行った。「JRパス」という外国人観光客専用の新幹線乗り放題パスがあり、彼らは私たち日本人とは異なる距離感で動く。90分で行ける東京に日帰りで行くお客さんもいた。

稲刈りの時期、日本在住の外国人2万人が情報共有するSNSに「コシヒカリの名産地で稲刈り体験をしませんか?」と投稿してみると、すぐにアメリカ人家族から予約が入った。その家族の紹介で、別の家族も泊まりに来てくれた。

外国人観光客がたくさん来るということは、日本人では気付くことのできない観光資源が発掘できるということだ。「廃寺に泊まるなんて怖い」という日本人はいるのかもしれないが、外国人からしたら、築200年以上の文化財で寝泊まりできる体験は貴重なのだ。

日本人の旅スタイルは、1週間以内の旅行で観光名所めぐりを目一杯詰め込むプランが多い。しかし外国人には、自由に行き当たりばったりの長旅をしたいと思う人が多い。日本人より休暇が長く、JR乗り放題のパスもあるため、ユニークな体験ができれば、そこが無名な場所であっても、外国人はやってきてくれる。

外国人労働者も外国人観光客も今後増え続ける。「言葉が通じない人がたくさん来るのは不安」という人もいるかもしれないが、私たちと違う価値観を持った人たちが来るということは、従来の価値観では活用できなくなっている文化財や観光資源が再生されるチャンスでもある。是非、この機会に多様な価値観を吸収することで、地方の活性化につなげていこうではないか。



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