トップページ知って得する講座小室ショックと介護の雨の冷たさ 想像できる世の中へ

小室ショックと介護の雨の冷たさ
想像できる世の中へ

日経ウーマンオンライン「河合薫の女性のリアル人生相談」より転載 

小室報道が置き去りにした介護の本当の問題

小室哲哉さんが週刊誌のスクープ記事を受けて、引退表明の記者会見を行いました。その模様を見た人は、どのような印象を持ちましたか。さまざまな報道があるなかで、見逃してはいけないのは会見最後の小室さんの言葉だと健康社会学者の河合薫さんは指摘します。アラサー独身OL代表のニケさんと一緒にこの騒動について見ていきましょう。

【Q】TK引退が与えた社会的インパクトって?

今週の気になる話題 Vol.3「小室哲哉の引退はショック」

小室哲哉さんの引退報道にはびっくりしました!TK世代ど真ん中といっていいほど、小室哲哉さんの音楽にハマっていた私としては、寂しい気持ちでいっぱいです。久々にカラオケに行って、「FACE」とか「SWEET 19 BLUES」とか、「I BELIEVE」とかを歌いたいです。(38歳・製造・一般事務、独身)

【A】介護の直視するべき問題が会見最後の言葉に凝縮されている

ニケ 引退しちゃうなんてビックリでした。薫さんもTK世代? ん?もうちょっと上?

カワイ メチャ世代ですよ。バブルでイケイケで、小室ファミリーの歌をカラオケで歌いまくりました。それに、小室さんってロス便に結構乗っていたので、私のCA時代、「サービスしちゃった〜」って自慢する同期もいたしね。CA辞めた後も、小室ファミリーの歌は常に生活の中にありました。ところで、ニケさんは記者会見を率直にどう感じました?

ニケ う〜ん……一時代を築いた人が辞めちゃうのは、残念だなぁって思いました。あと介護のこととか……気の毒だなとは思ったけど、もし自分が奥さんだったら……悲しいです。うん、すごく悲しいです。あと、ニケの同僚の人の中には「あそこまで話す必要あったのかなぁ」って言ってる人もいましたよ。

カワイ そうね。あの会見は賛否両論ありますよね。私はね、聞いていてとても切なかったわ。すごくすごく切なかった。

テレビではあまり報じられていないのですが、小室さんは記者会見で司会の人が「以上で終わりにします」って言った後に、「最後に一言いいですか?」って、こんなことを話したの。

「僕たった一人の人間の言動などで日本であったりとか社会が動くとは全く思っておりませんが。

先ほども言いましたように、なんとなくですが、高齢化社会に向けてであったりとか、介護みたいなことの大変さであったりとか、社会のこの時代のストレスであったりとか、そういうことに少しずつですけどこの10年で触れてきたのかなと思っているので。

こういったことを発信することで、皆さんも含めて、日本をいい方向に、少しでも皆さんが幸せになる方向に動いてくれたらいいなと心から思っております。微力ですが、少し何か響けばいいなと思っております。ありがとうございます」

ニケ へ〜っ、知らなかった。これを聞いて、薫さんは「切ない」って思ったんですか?

カワイ ううん、ココだけではないです。私は小室さんの会見を見て、そしてその後もさまざまな意見を見たり、聞いたりして、「これが介護問題の本質なんだ」って思いました。

ニケ 介護問題の本質、ですか?

介護する立場になって、初めて雨の冷たさが分かる

カワイ 介護の最大の問題は、自分がその立場にならないと「雨の冷たさ」が分からないってことなの。

ニケ 確かにこれだけ毎日のように、「介護」って文字をメディアで見るのに、すご〜く正直なことを言うと……、自分の親も介護とか必要になるのかもしれないけどリアリティーがないかもしれません。

カワイ 私の父のことはこれまでにも何度か話してきましたよね。

ニケ はい、バリバリ元気で、毎朝腹筋50回、背筋50回の筋トレやって、毎日ゴルフやっていたのに、がんが見つかってしまったんですよね。

カワイ ホントに突然でした。入院して1週間で、10歳くらい年を取ってしまったし、お風呂に入れないので、背中を拭いてあげようとしたら、ビックリするくらい小さい背中で。私の中の父とは全く違う現実世界の父にショックを受けました。

しかも、ある日突然やって来て、大きな変化から、次から次へと、「これでもか!」って変化が続いていくの。

ニケ どんどんおじいちゃんになっちゃうってことですか?

カワイ おじいちゃんになってしまうというより……「喪失」の連続かな。

変化が起きるたびに、それまでは当たり前にできていたことができなくなったり、当たり前にあったことがなくなってしまうの。一番悲しかったのは、ポジティブな感情の塊だった父から、どんどんとポジティブな感情が消えていったことです。

降り注ぐ雨は冷たくなるばかりでした。

でも、そういった状況になっても、家族は少しでも「笑いがある日常」を取り戻そうって、アレコレやるのよ。すると「よかった、もう大丈夫!」と安堵する日と、「ああ、どうしたらいいんだろう」と途方に暮れる日が入り乱れ、四六時中振り回され、心と頭と体がバラバラになって、出口の見えない孤独な回廊に足がすくんで、何が正解なのか分からなくなってしまうのです。

小室さんの会見の後、「介護は大変だからもっと気楽に相談できればいい」という意見がありました。確かにその通りなんだけど、傘を借りるのって案外難しいのよね。

ニケ 相談する余裕もないくらい大変ってことですか?

カワイ なんというか……「遠い」っていうのかな。

ニケ 遠い、ですか?

カワイ 私は父に変化があった直後に、友人とランチをする約束があってね。でも、そんな気分になれなういでしょ。だからお断りの連絡をしたの。そしたら友人が、「何も力になれないかもしれないけど、話くらいは聞けるよ。話すと少し楽になるかもしれないからお茶だけでもしようよ」って言ってくれた。

それで彼女に会った。でも、私は救われるどころか傷ついた。それで、二度と人には言わないようにしようと思いました。

ニケ えっ! ど、どんなひどいこと言われちゃったんですか?

カワイ ううん、違うの。彼女に悪気はないの。彼女は優しい気持ちで言ってくれたことなんだけど、遠過ぎて……。彼女が善意で投げかけた言葉と、私の心が遠過ぎて。彼女の善意を受け止めることができなかった。

ニケ 難しいですね……。

社会に必要な「しなやかさ」とは

カワイ ただね、その一方で、同じように親の変化に直面している同世代がいることも分かってね。そういう友人は、大きな心の支えになりましたよ。

「お互い大変だね」「うちは今こんなだよ」とか、情報交換したり、励まし合ったり。その瞬間は少しだけホッとできた。

介護って、関係性も変わっていくのよ。

ニケ 関係性?

カワイ そうです。親子の関係性が変わっていくことは、想像以上にしんどかった。それまでの「父と娘」という絶対的な関係性が、父の変化をきっかけに崩れる。こっちが父を引っ張っていく立場になる。それまで一度も考えたこともない変化だから、かなり戸惑いましたよ。

ニケ 小室さんも、「奥さんと旦那さん」という関係とは変わったって言ってましたよね。大人同士の関係ではないみたいなこと。

カワイ そうですね。パートナーに変化が起きたときには、また違うしんどさがあるのだと思います。相手を大切に思う気持ちはどんどんと深くなる。四六時中頭から離れない。忘れられるのは仕事に没頭しているときだけ……。物理的な「時間」は一つだけど、人はその時間の中でいろいろな時間を生きているから。自分でも「どうにかしなきゃ」と思いながらも、自分を翻弄させる「時間」から逃げたくなる瞬間は、私にもありました。

介護は終わりが見えないしね。介護が終わるときというのは……いなくなってしまうときでもあるし……。

ニケ ううう〜、なんか切なくなってきました。

カワイ 東海大学医学部の保坂隆教授らが2007年に、在宅介護者を対象に行った調査では、回答した8500人中、約4人に1人がうつ状態で、65歳以上の約3割が「死にたいと思うことがある」と回答しています。自分が想像している以上に、冷たい雨が降り、心身が疲弊していくのが介護なんです。

働いている人の実に5人に1人が「隠れ介護」で、その数は1300万人を超えるというデータもあります。その大半は40代、50代の課長さんや部長さんです。「介護のことを話せば、周りが気を使うから会社には言えない」「会社に言えば迷惑を掛けることになる」という理由で、周りには言わないというか、言えないのよ。

ニケ 孤独にさせちゃ、絶対にダメですよね。だって、介護 ⇒ 孤立、介護 ⇒ うつ、孤立 ⇒ うつ……みたいな負のスパイラルになっちゃうし。でも……そうならないために、ニケに何ができるんだろう。

カワイ 今回のようなこと、つまり小室さんの記者会見ね、そういうことがあったときに、アレコレ批判が出るのは仕方がないことかもしれません。でも、ちょっとだけ「その雨はどんな雨なんだろう」って気持ちを寄せるしなやかさがある社会であってほしいと、私は思っています。小室さんの最後のコメントは、きっとそういう気持ちがあったんじゃないでしょうか。

ニケさんの同僚のように「あそこまで赤裸々にKEIKOさんのことを言うのはどうか?」という意見もありましたが、私はそれを隠さなくもいい社会を願います。車椅子でも、言葉がうまく出てこなくても、忘れてしまうことが多くなっても、元気だった頃の姿とは180度違う姿になっても、その事実を「かわいそう」という哀れみの感情ではなく、誰にでも変化は起こり、変化が起きてもそれはそれとして温かくありのままを受け入れられる社会。そんな社会であってほしいです。

ニケ 介護の映画とか、本とかもたくさん出てますよね?そういうのも見たり読んだりするだけでも、少しだけ寄り添えるかな?

カワイ もちろんです。あとは町で困っているお年寄りなどがいたら、「お手伝いしましょうか?」と声をかけるだけでもいいと思います。

ニケ 分かりました! 私、もう一度小室さんの記者会見、読んでみます。最初の印象とは違う受け止め方できるかもしれないし……。やってみます!

河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D)。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などで活躍後、東京大学大学院に進学。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに、600人超のビジネスマンをインタビューし、学術研究に従事。講演、執筆活動も行う。新刊に「他人をバカにしたがる男たち」(日本経済新聞社)。メルマガ「デキる男は尻がイイ―河合薫の社会の窓」。



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