トップページ知って得する講座身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり

身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり

5月11日の読売新聞日曜版の「名言巡礼」は、貝原益軒の「養生訓」から「身をたもち生を養うに、一字の至れる要訣あり」でした。ご一読下さい。

堅焼きせんべい1枚を、ゆっくり30分かけていただく。唾液がこんこんと湧き出て、味わいの輪郭はより鮮明になり、ふだんの食事もおのずと腹八分目に行き着く。

67歳の山崎光夫さんはこれを習慣にして体重は8キロ、胴囲は5センチそれぞれ減り、総コレステロール値は180台に落ち着いた。「よくかみ、よく味わい、時間をかけて食事をする。今日ただいまから、誰でもできる(貝原)益軒式健康法です」

山崎さんは不惑の頃から医学をテーマにした小説を多く手がけ、「ジェンナーの遺言」などで3度、直木賞候補になった。それまではテレビ番組の台本を書いたり、週刊誌の記者をしたり。「どれもフリーの仕事で大学を出てから会社や組織に属した経験は一度もありません」。時に半年も原稿料の入らない中で妻と2人の子供を養った。うっかり風邪でも引けば、即生活に響く。ではどうやって病を未然に防ぐか。

答えをくれたのが益軒だった。江戸時代の前半に83歳の長寿を全うした儒学者は、ほぼ70歳まで福岡藩に仕え、生涯に著した100部に及ぶ書物の大半は還暦を過ぎてからのものだ。健康指南の書で知られる「養生訓」の完成は死の前年である。

その名著が諭すのは、極めて常識的な知恵だろう。欲や怒りを抑えて心を穏やかに保ち、飲食や快楽はほどほどを心がけつつ、適度に体を動かす。「つまり、決して無理はしない。ある意味、臆病に生きてこその人生なんだと、益軒さんに教わりました」(山崎さん)

身を健やかに保ち生気を養うには大切にすべきただ一文字がある――養生訓はそう説き、答えを〈畏の字是なり〉とした。畏れるとは身を守る心の法であり、気ままを畏れるところに、慎みの心が生まれると。

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「畏」とは、コトバンクによりますと、以下のとおりです。
<http://kotobank.jp/word/%E7%95%8F>

畏(かしこ)
1女性が手紙の終わりに添えるあいさつの語。
2恐れ多いこと。もったいないこと。多く「あなかしこ」の形で用いられる。
3すぐれていること。すばらしいこと。
4思慮・分別などに優れていること。利口なこと。

い(畏)
音:イ(ヰ)訓:おそれる かしこし かしこまる
1おじけづく。おびえる。「畏懼(いく)・畏縮・畏怖」
2うやまい、かしこまる。「畏敬・畏友」
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古今の書に通じ、日本中を旅し、古楽をたしなみ、22歳下の妻を慈しみ、知己と交わり、食を楽しみ、かつ膨大な著述に励んだ益軒は、まさにスーパー老人と言えよう。

ただしそれは老いを淡々と受け入れ、老いること自体に楽しみを見いだした、慎みの果実である。文・宇佐美伸

◆貝原益軒(1630〜1714年) 儒学者、本草学者。筑前国福岡藩士、貝原寛斎の五男で当初は損軒を号した。17歳で藩に仕えたが、2年後に当時の藩主の不興を買い、藩を離れる。26歳の頃、3代藩主黒田光之に帰藩を許され、程なく京都や江戸に遊学を重ねて最先端の知識を学んだ。30代以降、本格的に藩の中枢に侍講を重ねるなど重責を担い、「黒田家譜」「筑前国続風土記」を編纂した。主な著書に「養生訓」のほか、「大和本草」「和俗童子訓」「大疑録」「和州巡覧記」などが知られる。

晩年にこそ開ける境地…福岡市

上部を三角屋根のようにかたどった墓碑がふたつ、低い石垣に囲まれ仲良く並んでいる。向かって右が貝原益軒、左は妻の東軒のもの。形も大きさも一緒なら、石も同じ花こう岩だ。夫妻が全く同格というところに、益軒の深い愛妻ぶりが知れる。

貝原家の菩提寺である金龍寺(中央区今川)には、これら墓碑の傍らに、文机を前に端然と座す益軒の立派な銅像も立っていた。

台座に刻まれた漢文の自書がいい。「性格のいやしい私は体も既に衰え果てたが、古に学ぶのは飽きず、老いてますます楽しい。愚者も千慮すれば得る物があるとは、自分にも当てはまる」(大意)。益軒63歳の達観である。

「益軒さんの言う楽しみは決して快楽ではない。世の中そうそういいことなんてないんだから、千慮の努力ぐらいはしましょうよ、というところでしょうか」

そう話す住職の三好正信さんは日々、夜明けとともに2時間ほどをかけて境内を掃き清め、広い白州へ熊手で丁寧にはけ目を入れる。どこにどう楽を見いだすかは結局心の持ちようだと、仕上がった境内を見渡すたび思う。

と、ここまでを読み違和感を覚えた方もいるだろう。益軒は儒教を修めながら神道にも深く傾倒し、各地の神社を巡って関連の歴史書も書いている。そう、本来益軒は仏教徒ではない。

「実は貝原家には儒教に根差して先祖をまつる伝統が連綿と続いています」

福岡市博物館学芸員の鳥巣京一さんによれば、益軒の命日(10月4日)に営む益軒祭と、東軒の命日(2月3日)の東軒祭がそれにあたり、式次第は長く口伝された後、大正期の当主が習わし一切を書き残している。

例えば益軒祭で捧げる供物の料理も実に細かい。一の膳のみそ汁は、拍子木形に切った大根と里芋に焼き豆腐を加え、新菊か人参葉を添える。二の膳の平椀に盛るのは▽5〜6分の厚さに輪切りしたはんぺん▽半丁を斜め切りした三角形の焼き豆腐▽2寸5分の長さで茶筅(ちゃせん)形に切ったゴボウ……といった具合。

「床の間にはこの日だけ益軒像の軸が掛けられ、愛用した文机が手前に置かれます。そうした手順を全く違えず、日常として守ってきたことには、家としてのすごみすら感じます」(鳥巣さん)

「大和本草」16巻、「和俗童子訓」5巻、「自娯集」7巻、「養生訓」8巻、「諸州巡覧記」7巻――繰り返すが益軒は80歳前後の人生の最晩年に、これら膨大な著作を生み続けた。

いまなお続く儒祭を思うにつけ、益軒にとっては後世に伝える楽しみもまた、老いの糧だったはずだ。

食いしん坊 人生を楽しむ

「養生訓」は全8巻からなる大著だが、うち2巻を飲食論に割いている。裏を返せば益軒は相当な食いしん坊とも言える。

事実、生涯で24回足を運んだ京都の名物を「雑記」中に詳しく記している。まんじゅうや菓子類は「虎屋」。ういろうなら「二口屋」。ようかんは「ホウライヤ」で、ちまきが「道和」など、好みの店を明記し、酒を商う「東屋」では「花橘」「清瀧川」「らんさく」「三たらし川」等の銘柄にも固執する。

豆腐は「丸山豆腐」を強く推し、寒い時期のおぼろ豆腐にも特定の店を挙げる。「養生訓」で益軒は「豆腐には毒があって気を塞ぐが、新鮮な豆を使った煮え立てに大根おろしを添えれば害はない」とも記し、好物への執着ぶりがほほ笑ましい。

あっさりした薄味を好むべし。好物は少しを口にすることを心得よ。宴席に臨み気の進まないものは食べるべからず。水は清らかで甘いのを大いに選ぶべし。主人は酒をむやみに勧めず、客は酒をいたずらに遠慮せず――どの言葉も、食への深い愛着があるからストンと胸に落ちる。

益軒研究家としても知られる作家の山崎光夫さんは養生訓の深意を、「人生を大いに楽しむこと」とみる。確かに益軒は第1巻の総論で〈およそ人の楽しむべき事三あり〉として、善行、健康、長寿のみっつを三楽に挙げる。すべての自己節制はこの三楽を全うするためと思えば、多少の我慢は何とかなる……かな?

旅のアラカルト

◆アクセス 東京・羽田から空路で福岡空港まで1時間30分。

◆金龍寺 創建は1508年。「出家とその弟子」で知られる倉田百三が1年余を仮住まいした縁から、百三の文学碑もある。

◆貝原益軒屋敷跡 中央区荒戸のマンション脇に碑が立ち、業績を紹介する説明板も。

◆福岡を創った男・黒田官兵衛 NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」にあやかり、福岡藩の礎を築いた官兵衛のPRプロジェクトが進行中。専用サイト= http://fukuokakanbe.jp/

◆福岡市博物館 早良区百道浜。常設展示は時代ごとに11のテーマを設け福岡の歴史と文化を紹介。国宝の金印「漢委奴国王」や益軒の著作物のほか、話題の官兵衛のみこしなども。9時30分〜17時30分。

◆問い合わせ先 福岡市観光案内所(天神)092・751・6904。
 観光案内サイト「よかなび」= https://yokanavi.com/about

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以下は、五木寛之著「養生の実技―つよいカラダでなく―」からの抜粋です。

人間は死のキャリアとして生まれてきた。死を病院で救うことは出来ない。そうであるならば、病院にいかずに自分で延命する道はないのか。日ごろの用心がまず第一。治療では手おくれだ。治療より養生。これからの健康を考える上でのキーワードは、まちがいなく養生である。

むかしはどこの家にも「火の用心」のお札がはってあった。私の古いマンションの部屋にも、雷鳥の絵柄の黄ばんだ札がはりつけてある。

日ごろの用心がまず第一だ。もし失火しても、はやく気づけばボヤのうちに消しとめることができる。手近なところに消火器でもあれば、さらに安心だろう。そういう備えを古い言葉で養生といった。

私自身の体験と偏見による養生の実技100

(100)あす死ぬとわかっていてもするのが養生である。
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貝原益軒の養生訓を読んだわけではありませんが、五木寛之さんの「養生の実技100」に相通じるところがあるのではないでしょうか。

知って得する講座『心がけたい三つの「休め」』も併せてご一読下さい。
<http://www.chiffonya.com/shop/kouza/titoku252.htm>


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