トップページ知って得する講座幻想かもしれない「食生活の改善」押さえ込まれた欲望は暴発する

幻想かもしれない「食生活の改善」
押さえ込まれた欲望は暴発する

1月27日の日経ビジネスONLINEの“幻想かもしれない「食生活の改善」押さえ込まれた欲望は暴発する”は、なるほどと思ったり、いや、そうではないと思ったり、いろいろと考えさせられる内容でした。どうぞ!ご一読ください。

かなり以前から「健康ブーム」であると言われ続けています。私たちが普段接する情報のうち、健康に関するものが大きな割合を占めていることは、メディアの見出しや特集を見れば疑う余地はありません。

「健康の追求」は一過性のブームなどではなく、私たちのニーズの中心的存在にすらなっているのが現状です。ただし、健康に関しては多様な話題があるように感じられるものの、発信されている情報や実際のニーズをよく見てみると、実は特定のある1点に向かって集約されていると言えそうです。

そう、それは「ダイエット」です。体重が多い、体型が気になるといった悩みは、ずばりダイエットそのものの話ですし、コレステロール値、血糖値、尿酸値など血液の数値的な話も突き詰めていけば、広い意味でのダイエットに含まれるでしょう。肝機能障害や糖尿病、心臓病などの疾病もダイエットと極めて深い関係があります。実際ダイエットによって、疾病のリスクが低減されることも多いはずです。

つまり現代の日本を生きる私たちにとっては、「健康=ダイエット」と捉えても決して言い過ぎではないのかもしれません。例えるならば、「すべての健康法は、ダイエットに通ず」という状態です。そして、私たちの体の状態は自分が食べたものによって大きく左右されるわけですから、ダイエット法の多くが食に関することであるのも、至極もっともなことです。

<健康志向の裏で“メガ盛り”ブーム>

特定の食材を継続的に摂取することで痩せられるらしいというダイエットは、ポピュラーな方法の1つです。過去に注目された食材はりんご、バナナ、納豆、ゴマ、キャベツ、寒天、ココア、ヨーグルト・・・など、数知れません。ほかにも、米や麺類などの炭水化物を抜くことだったり、「プチ断食」をすることだったり、次から次へと新しくて「効果がありそうな」ダイエット法が登場しています。

また、「トクホ」(特定保健用食品)のお墨付きをもらった商品の中で人気なのは、「脂肪がつきにくい」だったり、「コレステロールを下げる」だったり、ダイエット効果をうたったものが中心です。

これだけダイエットに対する人々の関心や意識が高く、そしてそれに応えてくれそうな食材・食品が溢れているのですから、日本人はみな理想的な体型をしていそうなものです。しかしご覧の通り、現実はそううまくは行っていないようです。

ここで注目してみたい事象があります。日本マクドナルドが2007年に全国発売した「メガマック」は、そのようなダイエット志向に対する強烈なアンチテーゼとして大きな話題を呼びました。

本来であれば、過剰なカロリーや強い満腹感は現代人の大敵であるはずが、メガマックはそんなものを軽々と乗り越え、大ヒット商品となったのです。マクドナルドではその成功をきっかけに「クォーターパウンダー」という、通常よりも大きなサイズのハンバーガーを主力メニューとしてラインアップするようになりました。

そして、マクドナルドの成功の後を追うように、外食各社は牛丼やラーメン、カレーなどの店舗において「メガ」や「特盛」と名乗った特大サイズの新たなメニューを投入し、それぞれ一定の人気を獲得しているようです。コンビニエンスストアでも超大盛りの弁当やビッグサイズのデザート類が続々と開発され、それらも予想以上にヒットしていると聞きます。

少し話は変わりますが、この数年ラーメン業界では「つけ麺」が大きなブームとなっています。つけ麺とは、スープと麺が別に盛られていて、ざるそばのように麺をスープにつけて食べるスタイルのラーメンのことです。

つけ麺ブームの理由としては、「通常のラーメンよりも、麺自体をしっかり味わえる」という説明がされますが、私はそれだけが要因ではないと考えています。

つけ麺を出す店では普通盛りのほかに、大盛りや特盛りなどのメニューがあるのが一般的ですが、それらの価格を普通盛りと同一に設定している店が多いのです。そして男性客がこぞって、麺の重量が300グラムや400グラムもある大盛り、特盛りを注文している光景をよく見かけます。

つまり彼らは、「腹いっぱい」食べているのです。

頭では体重や体型を気にしてカロリーを節制しなくてはと思いつつ、けれどもいざ食べ物を前にするとその誘惑に負けてガッツリと食べてしまう。これが現代人の食生活の大きな問題点だと思います。このような事態を「食欲の暴発」と呼んでみることにします。

食欲というのは動物が本来持っている欲望ですが、それを理性で無理やりに抑え込むことで、熱気を帯びた「マグマ」が脳内に溜まってしまうのではないでしょうか。そして臨界点を超えると、そのマグマが暴発してしまうわけです。

先ほどは主に男性が時にボリュームたっぷりの食事を取ってしまうことに触れましたが、女性も例外ではありません。ダイエットの反動で、お菓子を「ドカ食い」するというような話はよく耳にするものです。

このような暴発によって食べる量が極端にぶれることは、健康を考えるうえで決してプラスなはずがありません。

<標準的な食生活は太る>

ではそのような暴発を避けるには、どうしたらいいのでしょうか? 普通に考えれば、暴発の原因である「食欲の抑え込み」を少し緩めてやることでしょう。すなわち、こまめに「ガス抜き」をするのです。

あまりに禁欲的な食生活を送るのではなく、日々の食事の中で少しずつ欲望を解放していく。しかし、それでは今度は慢性的に「カロリー過多」の状態に置かれることになってしまいます。節制しすぎれば食欲が暴発し、節制しなければ慢性的なカロリー過多になる。さあ、私たちはにっちもさっちもいかない状態に追い込まれてしまったようです。

ここで私から1つの提案です。それは「現代の標準的な食生活を送っていると、私たちは必ず太るのである」という残酷な事実を、まずはきちんと認識することが必要なのではないかということです。大食いや食べ過ぎなどではなく、あくまで標準的なごく普通の食生活を送っていても太ってしまう、というのがポイントです。

考えてみれば、多くの日本人が飢えの心配をしなくて済むようになったのは、この50年ほどのことでしょう。それまでは長い歴史の中で、常に栄養不足の危機にさらされてきたわけです。太古から続く人間の体のメカニズムがそう簡単に変わるわけではありませんから、食べ物を安定的に摂取すれば、それをため込もうとすること、すなわち太ることはごく当たり前のことと言えます。

ですから、私たちはその前提に立ち、「食生活改善でダイエット」を実現しようとする願いを、いよいよ諦めるべきなのかもしれません。そうでないと、また次から次へと生まれてくる「究極のダイエット法」にすがりつき、思うようにその成果が出ないことを憂う日々を送ることとなってしまいます。

食生活によるダイエットがうまくいかないのは、決して私たちの意志が弱いからなどではなく、「現代社会の必然」なのです。そう考えた方が、よほどストレスなく食と向き合うことができるようになるのではないでしょうか。

もちろん、このことは、開き直って欲望に任せて好きなだけ食事をすることを薦めているのではありません。病気にならないためにはある程度の節制も必要ですが、自らの理想の状態に近づこうとしても、食生活でできることには限界があるんだということを、しっかりと認識した方がいいのではないでしょうか。

「食生活をほんの少し変えるだけで、理想の自分が手に入る。そして、それによって人生がすべてうまく回りだす」

これが幻想に過ぎないことには薄々気づきつつも、それでもまだ信じたい、あるいはそんな夢を見させてほしいと願ってしまうところに、私たち現代人の哀愁があり、そしてそれをターゲットとしたビジネスが成り立っているように思われます。

子安 大輔(こやす・だいすけ)
カゲン取締役。1976年生まれ。東京大学経済学部卒業後、博報堂に入社し、飲料・食品・金融などのマーケティング戦略立案に従事。2003年、飲食業界へ転身。2005年に飲食店のプロデュースやコンサルティングを手がけるカゲン(東京都世田谷区)の設立に携わり、取締役就任。起業や独立などのための専門スクール「スクーリング・パッド」(東京都世田谷区)設立にも関わる。2009年、『「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ』(新潮新書)を上梓。
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ファストフードを代表するハンバーガーチェーン、マクドナル社のイタリア進出が、「スローフード」国際協会設立の切っ掛けになったことは有名ですが、それに比べて、日本ほど外国の食文化に寛容な国はないのではないでしょうか。それが、日本の食の伝統を失うことにならなければいいのですが。

以下は、スローフード国際協会会長、カルロ・ペトリーニさんの言葉です。

本当においしいものは何か。まずは食べておいしくなければならない。当たり前だがこれを忘れてはいかん。どんなに正しく作られた食品でも、おいしくなければ意味がないんだ。そして次に、その食品が作られるプロセスにおいて、環境に負荷を与えないこと、そして道義上適切な作られ方をしていることだ。第三世界を搾取するような方法で生産されていては、どんなにおいしくても、これまた何にもならないんだよ。

環境に関心のないグルメは愚か者だが、かといって、食に関心のないエコロジストはといえば、それはただ退屈なだけなのだよ。
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「スローフード」は、単なる美食でなく、地域に根ざした食文化を見直し、持続可能な農業、生物多様性を守ることまで視野に入れた運動です。カルロ・ペトリーニさんの著書「スローフードの奇跡 おいしい、きれい、ただしい」(三修社2400円税別)が出版されました。


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