トップページ知って得する講座“「平成の太閤検地」実施を、子孫に「最低限の美田」残せ”

“「平成の太閤検地」実施を、
子孫に「最低限の美田」残せ”

4月15日毎日新聞朝刊「記者の目」井上英介(千葉支局)より転載

食料自給率の向上が叫ばれる中、耕作放棄地は増え続けて約38万ヘクタールとなり、全耕地面積の1割を占めている。農地は一体どうなっているのか。素朴な疑問を抱いて荒れた農地を訪ね歩き、昨年9月から「農地漂流」というシリーズで報告してきた。農業については多くが語られるが、農地は知らないことばかりで、取材は驚きの連続だった。自給率を論じる前に、農地荒廃の現実を直視すべきだ。

農地に興味を持つ前、別の取材で山形・庄内平野の専業農家に話を聞いた。(07年12月31日朝刊「ふるさとはどこですか」)その時の相手の疲れ切った顔が忘れられない。

稲作に情熱を燃やし、借金でそろえた農業機械で規模を11ヘクタールまで拡大した。栽培技術で何度か表彰もされた。だが、予想以上の米価下落で自己破産に追い込まれた。差し押さえられた水田を前に、農家のあるじは言った。「目隠ししてもあぜを歩ける。土を手でもめば、自分の田んぼだと分かる。ここを手放す気持ち、分かるかい」。農家にとって農地とはそういうものなのか……。返す言葉が見つからなかった。

だが、私の住む千葉県は事情が異なる。高額運賃で利用者を悩ませる第三セクター鉄道に沿って、農家が豪邸を構えている。広い庭に軽トラックと高級外車を無造作に並べた家もある。農地を鉄道用地や宅地に高値で提供した人たちだ。その一軒でこう言われた。「農業で戦後ずっと苦労してきた。引退してのんびり暮らすのが悪いのかい?」

地方で稲作に励む専業農家が破産する一方、農地を売り高級車に乗る都市近郊農家がいる。私の中で「農家像」は両極に分解し、今も統一できないままだ。しかし共に、衰弱するこの国の農業の一断面に違いない。その陰で農地は転用され、耕し手を失って雑草に覆われていく。

耕作放棄地と聞けば、後継者もない高齢農家ばかりの山間部を想起しがちだ。ところが、最新の05年農業センサス(国の農業統計)によると、耕作放棄地のうち20万8000ヘクタールは中山間地だが、残り17万7000ヘクタールは「平地・都市地域」。すなわちほぼ半分は比較的条件に恵まれた農地だ。

耕作放棄された優良農地を調べるうちに、開発業者が水面下で地上げしていた事例にぶつかった。

農地は農家の私有財だが、国民の食料を生産する公共財でもあり、農家と農業生産法人以外は購入が農地法で禁じられている。ところが、業者は農家に金を払い「(宅地などへの)転用が許可されたら所有権を移す」と合法的に仮登記するやり方で、法の裏をかいていた。その揚げ句にバブル崩壊で開発が頓挫し、登記簿上の所有者である農家は「売った土地だから」と耕作しない。こんな荒廃農地が各地に点在している。

駐車場や資材置き場で賃料を得ようと、勝手に農地をつぶす違反転用も年間8000件を超え、その8割は所有者の始末書だけで現状追認される。取り締まるべき農業委員が自ら違反に手を染める例もあった。

これら違法、脱法の横行に加え、相続が引き起こす問題はさらに深刻だ。所有者が地元にいない「不在地主農地」は、判明しただけで約20万ヘクタールに上る。売買に伴う所有権移転は農業委員会への届け出が必要だが、相続による移転は不要とされてきたため、不在地主の正確な実態はつかめない。相続登記されない持ち主不明の農地が各地で発生し、地元の農家が借りられず、荒れたままになっている。

農地の混乱をいったんリセットするために、「平成の太閤検地」を実施したらどうだろう。

農水省が現在進める耕作放棄地の全国調査は、荒れ方のひどい農地を捨て、それほどでもない農地を選んで利用促進を図るのが狙いだが、それでは生ぬるい。まず全国で守るべき優良農地を確定し、一筆ごとに所有者と耕作者を台帳に厳密に記載する。農業委員会が作る今の農地基本台帳は、住民基本台帳のように法律で整備を義務づけた法定台帳ではないため、不在地主の増加で現況とのずれが拡大し、国内の正確な耕作面積さえ不明だ。

細切れの農地を大区画にまとめ上げる「ほ場整備」に血税を投じた優良耕作地さえ荒れている。荒廃の根源に、農業が経済的に成り立たない現実があるのは承知している。「農地を言う前に農政を立て直せ」という主張も聞いた。だが、農業を支える基盤それ自体が待ったなしで荒れている。せめて、正確な検地と厳密な台帳で、農地の漂流に歯止めをかけられないか。子孫に「最低限の美田」は残さなければならない。

4月9日、10日と読売新聞に「水田再生へ」が連載されました。
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生産調整(減反)が続くコメ政策に、変化の兆しが出てきた。主食ではない米粉用や飼料用のコメ「新規需要米」を新たに栽培する農家に国は今年度から3年間、助成金を出す。輸入頼みの小麦や飼料作物に代わるコメ作りを進めることで、水田の有効活用と食料自給率アップを図る狙いだ。
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「水田再生」の様な取組みは大切ですし、助成もするべきだと思いますが、国が本気で、自給率アップを目指すのであれば、先ず「平成の太閤検地」をしなければならないのではないでしょうか。


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