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呼吸する森「ワイズユース」を考える

大台ケ原は、年間降雨量5000ミリという世界有数の雨水量を誇り、湿潤な気象条件は屋久島と並んで日本を代表する原生林を形成しています。

鬱蒼としたブナの大原生林、苔むした幻想的な世界。けれど、昭和30年代の伊勢湾台風やドライブウェイの開通、シカの食害などで徐々に森林が衰退していき、今は“白骨樹林”と呼ばれるようになってしまった。開発によって変化した河川や海岸を元に戻そうとするのが再生事業ですが、大台ケ原では失われた原生林を取り戻そうとしています。

そこで昨年12月、わが国最初の入山者数をコントロールする利用調整地区がこの大台ケ原に出来ました。あるエリア(西大台地区の一部地域)を区切って、1日に入ることができる人数を制限しようというのです。これは、自然公園法という法律に基づいて決められました。

これまでも、尾瀬や知床など過剰利用を避けるために、利用調整地区を考えていましたがなかなか実現には至らなかった。日本の山は、誰でも入ることができます。それをやめて入山制限をするというのは、それぞれの利害関係もありなかなか難しいことなんですね。これも大きな自然再生への第一歩なんです。現在、運営方法を調整中で実際の運営は今年の9月からの予定です。

大台ケ原の利用者は年間25万人。東大台は周回道路があり、利用者がたくさん山に入ってきています。だから、今でも原生林の多く残る西大台を利用調整地区にしました。春や秋の繁忙期で1日に100人。 入る人はあらかじめ認定してもらい、入山料を払う。そして、許可書をもらって必ずレクチャーも受けなければなりません。これは環境省が運営するのではなく地元の指定認定機関が運営していきます。

植林とシカ、人間の問題をそれぞれ考えながら行う自然再生のカタチ。持続的に資源を維持しながら、うまく利用していかなければなりません。それは21世紀に生きる私たちへの大きな課題です。今、私たちにできること、それはまさに、「ワイズユース(賢明な利用)」なんですね。完全に利用を排除するのではなくて、利用をうまくコントロールしながらなんとか自然との共生を図る壮大な実験だともいえます。

20世紀は建設の時代でした。しかしそれは、ある意味で破壊の時代でもあったのです。だから、この21世紀は建設の代わりに保全をし、破壊の代わりに再生をしていこうという動きが、少しずつですが生まれてきています。それは新たな共生だといえます。

自然と人間との関係を昔のようにはなかなか戻せません。だからといって、あきらめるのでなく、自然と人間の新たな関係を構築していく。時計を過去には戻せません。時計が回っている中で、できることを考えていかなければなりません。

20世紀は自然の尺度で貴重なもの、生態学的に完璧なものにしか価値を置きませんでした。だから、里山などは簡単に宅地化、都市開発されていった。水辺も埋め立てられて護岸ができていった。ところが、今は人間とかかわってきた風景をどう守ろうかということに変わってきています。

干潟、里山、湿原、ため池、棚田など、20世紀に失ったものに今、光が当たりだしています。ふと、これまでを振り返って新たな価値付けをしようとして、いい方向に人は動こうとしています。

「自然史の風景」から「人類史の風景」にも目が向けられ始めました。大台ケ原など原生林を保全する自然史の風景、里山など人との関わりの中、生まれてきた人類史の風景。そのどちらも、私たちが守るべき風景なのです。

4月23日読売新聞、取材協力・奈良県立大学地域創造学部教授西田正憲氏


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