トップページ知って得する講座殺菌・異物除き安全第一、微妙な味の感性失う

殺菌・異物除き安全第一、微妙な味の感性失う

読売新聞夕刊「食の裏側4」から転載

手延べそうめん作りが盛んな長崎県南島原市。生産者の中川慶博さん(52)のもとに業者が売り込みにきたのは、2年前のことだ。「これを使うとカビが生えませんよ」。パンフレットにはオゾン殺菌の機器が載っていた。

湿気が多いと、そうめんに黒カビなどが生える。他の生産地では包装の中にカビ防止の脱酸素剤を入れる業者もある。だが中川さんは殺菌機器を断った。

「そうめんは、作る間に様々な菌が付いて風味が出る。30年ほど前は『カビは洗えば食べられます』と商品に書いてあった。きれいに落とせば問題はない。おいしく食べるために、今の消費者もそれを分かってほしい」と中川さんは話す。

そうめん製造では、異物混入にも気を使う。「手延素麺島原」のブランド名を持つ「素兵衛屋」(南島原市)の高橋勝太郎社長(72)は「不二家問題で、取引先から改めて衛生管理の徹底を求める通知が来た」と明かす。同社では出荷までに2回、金属探知機で異物検査を行う。冬の風物詩だった麺の天日干しも今はしない。ほこりやゴミが付くからだ。

米国では、虫やカビの混入基準がある。警告や罰則の対象となるのは、小麦粉なら「50g中、虫の断片が平均75個以上」。米食品医薬局のキンバリー・ローリングズ広報担当官は「虫やカビは完全に防げない。基準内なら見た目が悪くても害はない」と説明する。

元農水省果樹試験場長の梅谷献二さん(76)は「日本のような虫1匹でもダメというのでは、労力が何倍も違う。殺虫剤で処理すれば、その量の方がはるかに問題」と話し、「異物がこんなに問題になる国はない」と指摘する。

NPO法人「市民科学研究室」代表の上田昌文さんは先月、小学生対象の「料理科学教室」の味覚実験で、「あれ?」と思った。

レモンやコーヒーを、味がわかる限界まで薄めて飲ませると、感想は「おいしくない」「水と同じ」。「酸っぱい」「苦い」という言葉が出てこない。上田さんは「微妙な味が表現できない。濃い味付けの加工食品などに慣らされたためではないか」とみている。

科学の発達で食材は大量生産され、清潔になった。だが、生活の中で人々がはぐくんできた食への「知」「感」を喪失させた、と上田さんは感じている。

「消費者は食べ物をパック入りの工業製品のように考え、安全かどうかの判断を消費期限などの『記号』に頼っている。『食べ物は生きている』という気持ちを持ってほしい。そうすれば、もっとおいしく味わえるはずだ」

「食の裏側4」で一番気になることは、小学生対象の料理科学教室の味覚実験の結果です。以下、小泉武夫さんの「食の堕落と日本人」からの引用です。

私の好きな言葉に「濃処の味は常に短く、淡中の趣は独り真なり」というのがある。西洋料理や中華料理のように濃い味は、その場では美味しいと感じるがそのうちに感動は薄れてすぐ忘れる。しかし、日本料理には美味しさの中に上品な薄さと淡さがあって、しかもそれがいつまでも忘れられない。これこそが本当の美味しさである、という意味だ。濃い味は誰でも付けられるが、淡い美味しさというのはそう簡単には表現しにくい。つまり「美味必淡」の原点が日本料理の真髄であり、日本食の極意なのである。ところが今日では、残念なことにこの極意がどんどん忘れ去られていっている。

食べ物は人の心まで変えるということはすでに述べた。食べ物の味が濃くなれば、日本人独特の情緒も次第に薄れていき、そのうち誰もが濃い味を求めることになり、気がつけばどうにもならないほどの殺伐とした世の中になってゆくのかもしれない。


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