トップページ知って得する講座「腹八分に医者いらず」で脳力≠伸ばす!

「腹八分に医者いらず」で脳力≠伸ばす!

「脳を鍛えるにはどうしたらよいのか」「記憶力をもっと高めたいのだけれど」という質問をよく受ける。都合よく脳力を伸ばせる方法があるのならば、私自身がまず試してみたいところであるが、結局は努力あるのみというのが私の持論である。さらにいえば、目的を達成しようというハングリー精神や、何でも興味を持つ好奇心が重要なようである。そんなこと言わずともわかっていると叱られそうであるが、こればかりは仕方がない。

その一方で脳の特徴を理解することで見えてくる学習のコツがあるのも事実である。たとえば危機的な状況にあると注意力や記憶力が促進される。これは脳に備わった普遍的な性質だ。私たちはヒトである以前に動物である。私たちの脳はヒトに至って突然完成したのではない。長い進化の過程で少しずつ現在の形へと変化してきた。野山をかけまわる原始的な動物だった頃の野生生活に適した性質が、ヒトの脳にも刻まれているのだ。

大自然の中で生活する動物たちは常に生命の危機にさらされている。危機を効率よく回避するためには、敵に遭遇した状況や獲物にありつけない道をきちんと記憶しておく必要がある。ヒトの脳にもこうした性質が残されているため、危機感を脳に呼び起こせば記憶力が高まる傾向がある。

たとえば、冬になるとエサを得にくくなることを本能的に知っているのだろうか、脳は寒いときに危機感を感じるようだ。「頭寒足熱」という言葉にあるように、頭部の温度が低めのときに仕事の能率が上昇することが知られている。

空腹もまた生物にとっては危機である。栄養を摂取できるか否かは直接命に関わる。米イェール大学のホーバス博士は、2006年3月号の「ネイチャー神経科学誌」に、空腹と脳の関係を決定づける驚くべき実験結果を発表した。彼はグレリンという生体物質に着目した。グレリンは胃が空っぽのときに放出される消化管ホルモンである。腹が空くと、血液に乗って胃から脳にグレリンが届けられる。たとえば視床下部という脳部位にグレリンが作用すると食欲が増進する。腹が減ると食を欲するのはこうした理由だと考えられる。

ホーバス博士は、学習に必須な脳部位である海馬にもグレリンが強く作用することを発見した。グレリンが海馬に届くとシナプス数が30%も増え、シナプス活動の変化率が増大する。驚くべきことに、グレリンを投与したマウスでは迷路を説く能力が高まる。逆に、グレリン遺伝子の働かない気の毒なマウスでは、空腹信号が海馬に届かないため、シナブス数が正常よりも25%ほど減ってしまい、結果として記憶力も低下する。普通のマウスは見たことのない新しい物体に興味を示すが、この変異マウスでは新しいものに興味を示さなくなってしまう点も見逃せない。

こうして見ていくと、栄養は体に必要だとはいえ、食べ過ぎは必ずしも脳にとってよくないことがわかる。グレリンを脳に伝えるためには、たらふく食べることは避けたいし、無駄な間食も慎むべきであろう。試合前の格闘家がしばしば言う「減量中は頭が冴えるようだ」という発言にもグレリンが関係しているのかもしれない。

「腹が減っては軍が出来ぬ」は、今や古き時代の言葉。暖衣飽食の現代では「腹八分に医者いらず」の心意気をむしろ尊重したい。海馬を鍛えるのは文字通り「ハングリー精神」なのだから。
・・・・・・・・VISA 2006 JUN 406 東京大学薬学部講師 池谷裕二


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